sake-brewer’s blog

28歳 蔵元杜氏の日本酒ブログ

魂の酒

 

目次

 

 

農口尚彦 杜氏

日本酒好きの人なら、この名をご存知の方も多いかと思います。

能登杜氏四天王」や「現代の名工」など様々な肩書を持ち、「酒造りの神様」とも称される伝説の杜氏です。

農口杜氏は70年もの酒造りのキャリアを持ち、連続12回全国新酒鑑評会金賞受賞を含む通算24回金賞受賞という輝かしい実績を誇り、85歳になった今もなお最前線で酒造りをなさっている正しく生ける伝説です。

 

 

魂の酒

「魂の酒」は2003年にポプラ社から出版された農口杜氏の著書です。

農口杜氏の生き様や酒造りの考え方、職人としての矜持を学ぶことができる日本酒好きには是非読んで頂きたい1冊です。

私自身、読むたびに新たな学びがあるため、定期的に読み直しています。

今回、久しぶりに読み直したので、感銘を受けた内容の一部をほんの少しだけブログにまとめてみました。

 

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魂の酒 農口尚彦 著

 

酒造りは「一麹、二モト、三モロミ」と言うんですが、わしは極端に言ったら「一麹、二も麹、三も麹」やと思ってるんです。

 

「一麹、二酛、三造り(醪)」 (いちこうじ、にもと、さんつくり)

これは、酒造りにおける作業工程の大切さを順番に示した業界用語です。

酒造りにおいて1番大切なのは麹造り、2番目は酒母造り(酛)、3番目は醪の仕込み(造り)という意味です。

しかし、私は麹、麹造りこそが、酒造りの神髄だと考えています。

麹の出来栄え一つで、酒の味わいや香りの立ち方、米の溶け具合から酵母の増殖、発酵のスピードまで酒造りのほぼ全てをコントロールすることが出来るからです。

私は、日本酒造りは麹で決まると考えていたので、農口杜氏も「一麹、二も麹、三も麹」という考えなのかと思うと、名杜氏に少し近づけたような気がして思わずニンマリしてしまいました(笑)

 

 

失敗は杜氏にとっては大事な勲章のようなもんです。失敗はしちゃいかんのですが、しなくちゃわからんのです。

 

酒造りの神様と称される農口杜氏ですら何度かモロミをダメにしてしまった経験があるそうです。

日本酒造りは麹菌や酵母などの微生物の力を借りて造られるものなので、温度や分析値の数値では測れないモノが存在します。

それを如何に感じ取り、最善の手を打つことができるかどうかが杜氏の腕の見せ所なのですが、喋ってくれない微生物が相手ですから、失敗することもあります。

その失敗した時の状貌、数値、感覚、方法、最善の改善策は失敗した人にしかわかりません。

そして、その失敗から学んだことが経験として残って、技術や精神を下支えしてくれるのだと思います。

農口杜氏は70年も酒造りに携わっているわけですから、小さい失敗から大きい失敗まで本当にたくさんの体験をしてきたと考えられます。

その失敗から学んだことが経験という勲章となって、農口杜氏の酒造りに活かされているわけですから、日本中の飲み手を魅了し感動させる酒を造ることが出来るのだと思いました。

私は大学を卒業してから数年間、他社様で酒造りの勉強をさせて頂きましたが、そこではたくさんの失敗を経験させて頂きました。

こっぴどく怒られたりもして、出社したくないような時期もありましたが、失敗から学んだことは多く、今の私の酒造りにも活きています。

そして、これからもまだまだたくさんの失敗を重ねていくと思いますが、その失敗からしっかりと学び、経験という杜氏の勲章に変えて腕を磨いていきたいです。

さすがに会社に大きな打撃を与えるような失敗だけはしたくないですが・・・(笑)

 

 

最後に

現在85歳になられた農口杜氏ですが、今もなお現役で石川県小松市の農口尚彦研究所にて酒造りをなさっています。

農口尚彦研究所は農口杜氏の酒造りにおける匠の技術・精神・生き様を研究し、次世代に継承することをコンセプトとし、夢や情熱を持った若者と共に酒造りをしたいという、農口杜氏の熱い想いを受け止めて設立されました。

農口尚彦復活!「農口尚彦研究所」公式ウェブサイト

農口杜氏の酒は大変人気で、なかなか入手困難なのが現状ですが、「間違いない」酒ですので見かけたら逃さないようにしてくださいね。

先日、現在販売しているシリーズ全てを飲ませて頂く機会があり、酒を通して農口杜氏の生き様を感じてきました。あまりに完成度の高い酒に感動してしまい、帰ってすぐ著書を読み返しました。

皆さんにもこの感動を少しでもお裾分けできればいいなと思い、簡単ではございますがブログにまとめてみました。

是非、著書「魂の酒」を読みながら農口杜氏の酒を飲んで、杜氏の生き様を感じて下さい。

文字通り魂の酒です。

 

 

B.C

全国新酒鑑評会について

全国新酒鑑評会の製造技術研究会が5月30日、東広島市東広島運動公園で開催され、私も参加してきましたので、1ヶ月遅れの報告をさせていただきます。

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目次

 

全国新酒鑑評会

全国新酒鑑評会とは清酒の製造技術と品質の向上を目指す全国規模の清酒鑑評会で、酒類総合研究所日本酒造組合中央会が共催している唯一の公的な鑑評会です。

全国新酒鑑評会は1911年から始まり、今回で106回目の開催になります。

今回は日本全国の蔵元から850点が出品され、421点が入賞、そのうち232点が金賞を受賞しました。金賞酒は入賞酒の中でも特に優秀だと認められた出品酒に与えられます。

 

 

製造技術研究会

製造技術研究会とは全国新酒鑑評会に出品されたすべての酒が利き酒することができる、酒造関係者の勉強会です。

金賞受賞酒の傾向や、選外になったお酒の原因を利き酒で突き止め、次の酒造りに繋げるための大事な勉強会なのです。

今回の製造技術研究会には、全国各地から酒造関係者1545人が参加しました。

 

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会場の様子

 

会場には出品酒が各都道府県別に並べられます。参加者は1点1点少量ずつ口に含み、香りや味わいを確認し、配布される出品酒目録に酒の特徴などメモを走らせていました。

 

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参加者に配布される出品酒目録

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会場案内図

私も朝から参加して約600点の利き酒をしてきました。

600点も日本酒を利き酒すると本当に体力を消費します。

初めて参加した際は50点も利き酒したらアルコールで舌が痺れて全部同じ味わいにしか感じられませんでした。笑

 

 

利き酒後

一通り利き酒を終えると会場の隅で話し込んでいる人が増えていきます。なにせ全国各地から業界関係者が集まるので、会場中知り合いだらけなのです。

今季の酒造りのことや、出品酒の傾向など情報交換の場でもあるのです。

私も年数を増すごとに業界内の友人が増えてきまして、普段蔵同士が遠くて会えないような友人とも製造技術研究会では会うことができるため、利き酒だけでなく久しぶりに友人に会う楽しみも持って参加しています。

 

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終了間際の会場写真

 

 

今年の出品酒の傾向

今年は全国的にお米が溶けやすい年でしたので、お米の甘味と高い香りを特徴とするお酒が多かった印象を受けました。

 

最後に 

今回は全国新酒鑑評会と製造技術研究会についてまとめました。

なかなか時間が取れず、製造技術研究会から1ヶ月後のブログ投稿になってしまいましたので、タイムリーな話題ではないですが、楽しんでいただけたなら幸いです。

酒蔵見学でのマナー

 

酒造りは目に見えない酵母菌や麹菌などの微生物の力を借りて行われる、非常に繊細で神経を使う仕事です。

そのため、見学の際にどうしても守って欲しい項目を「酒蔵見学のマナー」としてまとめました。

酒蔵見学に行く際の参考にして下さい。

 

目次

 

 

清潔な格好で

 

日本酒は微生物の力を借りて造られる発酵飲料です。

酵母菌や麹菌、乳酸菌といった微生物が複雑に織りなす「発酵」によって日本酒は造られます。

人間に益を持たす微生物反応を発酵と言い、人間の益を害する微生物反応を腐敗と言います。つまり、「発酵」と「腐敗」は表裏一体なのです。

我々清酒製造に関わる人間の仕事は、清酒醸造に有益な微生物が働きやすい環境を整えてあげることです。衛生環境には一番気を使い、なるべく外から雑菌を持ちこまないような努力をしています。(完全に0にすることは不可能ですが…)

そのため、見学者の方にはなるべく清潔な服装で来てほしいと思っています。

 

納豆や発酵食品の摂取を控える

 

杜氏や蔵人は納豆を食べないというお話を聞いたことがありますか?

これは本当のお話で、ちゃんとした理由があります。

日本酒造りの要である米麹を造る際に、納豆菌が混入し増殖してしまうと「スベリ麹」や「ヌルリ麹」と呼ばれる表面がヌルヌルした納豆のような麹になってしまいます。

納豆菌は繁殖力がとても強く、麹菌は負けてしまうのです・・・

スベリ麹は麹菌の増殖や酵素生成が不良なため、良い酒にはなりません。

さらに、一度麹室が納豆菌で汚染されてしまうと、麹室全体を滅菌しないといけません。

こういった理由から、杜氏や蔵人は酒造期間中には納豆を食べないという酒蔵がほとんどです。

現場ではそれほど納豆菌には気を付けているので、酒蔵見学に行く際は、前日からの納豆断ちをお願いします。

同様の理由から、乳酸菌が多く存在するヨーグルトや漬物、表皮に青カビ菌が多く存在するかんきつ類も控えて下さい。

基本的に酒蔵には菌を極力持ち込まないということが重要になります。

 

香水や香りの強い化粧品は使わない

 

醸造製品はしっかりとした貯蔵管理を行わないと、劣化が始まってしまいます。

なかでも日本酒は特に繊細で、温度や太陽光、そして「臭い」の影響も強く受けます。

あまり知られていませんが、日本酒は簡単に臭いを吸着してしまうため、我々は貯蔵環境の臭いにも気を使っているのです。

外的環境の臭いがお酒に移ることを、移り香(うつりが)といい、清酒の官能評価では問答無用でオフフレーバーとされます。

そのため、酒蔵見学の際には香水や香りの強い化粧品の使用を控えて頂けると助かります。

 

上着を持っていくと良い

 

これは酒蔵見学のアドバイスになります。

蔵の中は真夏でも涼しく、冷房環境の整っている蔵ですと寒い思いをするかもしれません。

羽織ることが出来る上着をバックに忍ばせていくことをお勧めします。

 

 

まとめ

 

酒蔵見学のマナーですが簡単にまとめると、前日から発酵食品(特に納豆)を控え、見学当日は清潔な恰好で香水や香りの強い化粧品を使わないということです。

微生物環境が酒質に与える影響は非常に甚大です。

お互いに気持ち良く酒蔵見学をして頂くためにも、ご協力のほどよろしくお願い致します。

気になるお酒が造られている蔵の環境や造り手の想いを知れば、その酒がより美味しく感じると思います。

最近は酒蔵の見学や蔵開きを行っている蔵が増えているので、HPや電話で酒蔵見学の可否を確認し、見学可能であれば予約をしてから伺うようにして下さいね。

それでは楽しい日本酒ライフを!

 

 

B.C

「獺祭」醸造元 旭酒造 見学レポ

「獺祭」醸造元 旭酒造さんの酒蔵見学に行ってきました。

簡単ではございますが、見学の様子をまとめましたのでご覧ください。

 

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 本社蔵

高速道路を降りて山の中を走ること20分・・・大自然の中に不自然に聳え立つ12階建てのビルが姿を現しました。

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このビルこそが旭酒造さんの本社蔵です。今回はこの本社蔵における酒造りを見学させて頂きました。

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ちなみに、すぐ近くには2号蔵。こちらでもお酒を造っています。

 

 

見学者用の白衣と帽子を被り見学スタートです。

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蔵の入り口にはエアシャワーを完備。ここで服についた小さなゴミや髪の毛を蔵の中に持ち込まないように風で払い落とします。

 

洗米の様子

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まずは原料処理からということで、洗米の様子を見学するところからスタートしました。

1ヶ月ほど前から全自動の洗米機が導入されたそうです。(見切れていますが写真左)

しかし、機械洗米でのデータの蓄積量が不足していることから、まだ全量機械洗米にはなっていないそうです。近い将来、全量機械による洗米によって、より安定した洗米、浸漬が行われ、さらに酒質が安定することでしょう。

全自動洗米機は私の蔵にも欲しいですね~!(笑)

 

甑(こしき)と放冷機

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こちらが甑(こしき)と放冷機です。

甑とはお米を蒸す器具で、3人の蔵人が前日に洗米したお米を甑に張り込んでいます。

この甑で蒸したお米を放冷機で冷まし、麹造りやお酒の仕込みに使用します。

 

麹室(こうじむろ)

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こちらが麹を造る部屋です。麹室(こうじむろ)といいます。

圧巻の広さの麹室で、壁や天井がステンレス張りです。本来の麹室の壁や天井は木で出来ていますが、近年は掃除のしやすさからステンレスを採用する酒蔵が増えてきています。

麹室は麹菌が生育しやすいよう高温多湿の部屋で、室温は35℃ほどあり、湿度はエアコンで調整されます。

天井にぶら下がっている布は、空調の風が直接麹に当たらないように設置されています。隅々まで掃除が行きわたっており、ビカビカでした・・・。圧巻です。

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麹室の説明を受けていると、麹になる予定の蒸し米が引き込まれてきました。

蔵人が床台(とこだい)と呼ばれる台にお米を薄く広げています。この瞬間から麹造りがスタートします。ここから約48時間ほどかけて麹が造られていきます。

 

仕込み蔵

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こちらが仕込みが行われるフロアです。

3000L容のタンクが100本ほど設置されています。このタンク1つ1つで美味しい獺祭が醸されています。部屋は冷房が完備されており、1年中酒造りに適した温度になっています。日本酒は秋から冬にかけての寒い季節に造られるものでしたが、近年は冷房技術の発達によって、1年中日本酒を造ることができるようになってきました。

部屋中に青リンゴを思わせるようないい香りが漂っていました。

 

発酵の様子

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原料である麹、蒸し米、水が混ざっており、酵母菌が発酵しています。これを醪(もろみ)といいます。醪を搾ると日本酒になります。

表面のプクプクは酵母菌が元気に発酵して生産された炭酸ガス(二酸化炭素)です。

※アルコール発酵の化学式:C6H12O6→2C2H5OH+2CO2

酵母菌によってグルコース(C6H12O6)が代謝され、エタノール(C2H5OH)と二酸化炭素(CO2)がつくられます。

タンクの縁から下は炭酸ガス(二酸化炭素)が充満しているため、醪からいい香りがするからと顔を突っ込んだりしてしまうと、一瞬で酸欠状態に陥り、気を失ってしまいます。本当に危険ですので、酒蔵見学に行く際は気を付けてください

 

 

搾り機

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こちらが醪(もろみ)をお酒と酒粕に分ける搾り機で、“ヤブタ”といいます。

アコーディオンのような形をしていますが、横からの圧力をかけることによってお酒を搾ります。

 

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また、こちらは遠心分離による搾り機です。

遠心分離とは液体に対して強力な遠心力をかけることによって成分や比重が異なる物質を分離する方法です。

理論上、加圧を行わずに醪からお酒を分離することができるので、雑味の少ないお酒が搾ることが出来るようです。

 

瓶詰 

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こちらが瓶詰の様子です。

瓶詰は異物混入防止のため、クリーンルームで行われます。

瓶詰後はパストライザーと呼ばれる機械で加熱殺菌を行った後、ラベルが貼られます。

これで「獺祭」が完成します。ここからお客様の手元へと旅立っていきます。

 

 獺祭ストア

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見学後は本社蔵向かいの獺祭ストアにてお酒の試飲を行いました。

いつも安定して美味しいお酒ですが、見学させていただき、様々なこだわりを知った後で飲む獺祭はいつもより美味しく感じました。

獺祭ストアでは販売している全商品の試飲が可能で、獺祭の酒粕を使用したジェラートなども食べることが出来ます。ちなみにジェラートはバニラ味がお勧めです!

 

 

まとめ

 

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私はこれまでに様々な酒蔵の見学をさせて頂きましたが、旭酒造さんの設備はおそらく日本一でしょう。設備もさることながら、衛生環境も本当に素晴らしいです。

 

機械化出来ることは機械に任せ、本当に大切な部分に人の力をつぎ込む。

最先端の設備や蓄積されたデータを用いることで杜氏を雇うことなく、誰が造っても高品質で安定した「獺祭」の味を提供するといった、次世代の酒造りモデルとも言える新しいスタイルの酒造りについて学ばせて頂きました。作業効率を上げるための工夫や、酒質を上げるための工夫が随所に見られ、本当に勉強になりました。

 "ド"がつくマイナーブログではございますが・・・旭酒造の皆様、この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

 

最後に・・・旭酒造さんはAIを用いた酒造りを試験的に始められたそうです。

新聞やニュースでも取り上げられていましたね。

杜氏のいない酒造り」から「AIによる酒造り」になる日もそう遠くはないのかもしれませんね・・・

 

以上、簡単ではございましたが、「獺祭」醸造元、旭酒造さんの酒蔵見学のレポートでした。

 

利き酒能力を証明できる”唯一”の資格「清酒専門評価者」

どうも。B.Cです。

今回は利き酒能力を証明できる”唯一”の資格「清酒専門評価者」の概要や難易度について説明していきます。

 

目次

 

 

清酒専門評価者とは

 

感覚の感受性が高く、清酒の香りや味の多様な特徴を評価するのに一貫して反復可能な能力を有している評価者で、清酒の官能評価の経験があるとともに、清酒の製造方法や貯蔵・熟成に関する知識を有している専門家です。

独立行政法人 酒類総合研究所が試験及び認定を行っています。

 

正式名称は「清酒の官能評価分析における専門評価者」

英文名称は「Sake Expert Assessor, NRIB」

 

独立行政法人 酒類総合研究所とは酒類の最先端の研究を行っている国の研究機関です。研究の他にも品質評価や全国新酒鑑評会を主催しています。

 

 

認定条件

 

1:清酒官能評価セミナーを修了すること。

 

2:セミナーのカリキュラム中に実施される以下の5つの試験に合格すること。

  • 本味とにおいの識別
  • 酸味及び甘味の差異の検出
  • 香味強度の順位付け
  • においの記述とその由来
  • 記述的試験法

 

3:上記の試験すべてに合格後、清酒の官能評価に関する経験を証明する申請書を提出し、審査の基準を満たすこと。

 申請書には、経験を証明するために、従事した清酒の官能評価に関する業務等の説明及び問題点に関するレポートの添付が必要です。

 

 

清酒官能評価セミナー応募資格

 

酒類の製造業、販売業又は酒造技術指導に従事し、かつ、酒類の官能評価に関して1年以上の経験を有し、次のいずれかの資格を有する方となります。

なお、受講に当たっては化学、生物学、醸造学、統計学の基礎的な知識が必要です。

 

1:大学(短期大学を含む。)の農学・食品・生物系学科卒業以上の経験を有する方

2:職業能力開発促進法に基づく酒造技能士2級以上を取得されている方

3:当研究所主催の酒類醸造講習(旧・酒類醸造セミナー)、旧清酒製造技術講習又は公益財団法人日本醸造協会主催の「実践きき酒セミナー」を受講済みの方

 

 

まとめ

 

清酒専門評価者の試験を受けるには、まず清酒官能評価セミナーを受講しなければいけません。最近は定員に対して受講希望者が多いため、書類選考を突破しなければ受講することができません。

清酒官能評価セミナーのカリキュラムに含まれる5つの試験すべてに合格後、清酒の官能評価に関する経験を証明する申請書及び官能評価に関するレポートを提出することで、審査を受けることが可能です。ここで基準を満たしていれば、晴れて清酒専門評価者として認定される仕組みとなっています。

清酒専門評価者は平成19年10月から開始された資格になりますが、業界人でも非常に合格率が低い難関資格です。

現在111名が清酒専門評価者として認定されています。(平成30年5月末現在)

合格率は毎年20%前後、低い年は10%を切る難易度で、熟練の杜氏さんでもバシバシ不合格になっています。私が受験した際も、周りは杜氏の方や出荷管理をしているようなベテランの方が多く受験していましたが、合格率は20%程度でした。

自慢になりますが、私は1発で合格しました!(笑)

若いと官能評価の経験年数が少ないため、不利だと言われていますが、なんとか合格することができました。多分最年少での合格だったのではないかと思います。

年間2000種類は利き酒をしますし、飲みに出かけた際も様々な種類の日本酒を飲むように心がけているので、そういった日々の努力が実を結んでくれたのではないかと思っています。

 

清酒専門評価者に認定されると、毎年酒類総合研究所が主催している全国新酒鑑評会の審査員の候補になります。審査員は全国の酒蔵がプライドをかけて造ったお酒を審査するので、本当に責任のある資格なのです。

私にはまだ審査員の打診は来たことがありませんが、やれるのであればぜひやってみたいですね。

いつ声が掛かってもいいように利き酒の鍛錬は怠らないようにしています。

 

なお一般の方が認定をうけるには、公益財団法人 日本醸造協会が主催する「実践きき酒セミナー」を受講後、上記の「清酒官能評価セミナー」を受講し、試験すべてに合格し、官能評価に関するレポートが受理されれば清酒専門評価者として認定されます。

試験には香りの物質や化学反応についての筆記試験も含まれていますので、利き酒能力だけでなく清酒に関する高度な知識が必要となります。

業界人でもバシバシ不合格になるような試験ですが、自信があるという方はぜひチャレンジしてみて下さい。合格出来れば業界人にも一目置かれる存在になれますよ~!

 

 

さて、今回は利き酒能力を証明できる”唯一”の資格「清酒専門評価者」について説明させていただきました。

最近は利き酒系の資格がたくさん存在していますが、公的に認められた資格は清酒専門評価者だけです。

狭き門になりますが一般の方も受験可能ですので、日本酒の勉強や利き酒の鍛錬を積んで挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

 

B.C

「SAKE IN 広島」に参加してきました

こんにちは。B.Cです。

 

昨日、広島国税局主催のイベント「SAKE IN 広島」に参加してきました。

 

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中国地方5県の日本酒約200点を一堂に集め、参加者に利き酒をしてもらい、消費者の観点から、商品のコンセプトや味わいをアンケート式で伺うといったイベントです。


出品されているお酒は、お米の旨味や味わいが引き出されている芳醇旨口のお酒が多かったです。

 

また、燗酒の利き酒もあり、温度によるお酒の味わいの変化も利き酒することが出来ました。

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さらに、東広島市独立行政法人 酒類総合研究所の職員さんがブースを出展しており、普段利き酒をした事のない一般消費者の方々に、利き酒の仕方をレクチャーしていました。

一般消費者の方はとても勉強になったと思います。


また、酒蔵の方も各々の蔵の法被を着て運営を手伝っており、お客様とお酒談義で盛り上がっていました。


2部制ということもあり、1時間半のイベントでしたが、蔵の方との交流や利き酒のレクチャーも受けることができ、とても素晴らしいイベントでした。

広島だけでなく、山口や岡山でも開催されますので、近場に住んでいる方は来年行かれてみてはいかがでしょうか。

プロが教える日本酒の美味しい飲み方 その3

どうも。B.Cです。

 

今回は「日本酒の美味しい飲み方」シリーズの第3弾を解説していこうと思います。

日本酒初心者の方は必見です!日本酒を飲みなれている方も、新しい発見があると思いますので、ぜひ読んで頂けたらと思います!

 

おさらいになりますが、日本酒を美味しく飲む重要なポイントは以下の3点です!

 

  • 和らぎ水と一緒に飲む
  • 料理一緒に飲む
  • 様々な温度帯で楽しむ

 

それでは、本投稿では・ 様々な温度帯で楽しむ について解説していきたいと思います!

 

 

燗酒について 

日本酒は他の酒類には無い魅力を持っています。

それは1本の日本酒を様々な温度帯で、それぞれ違った味わいを楽しむことが出来るという点です。温度が変われば味も変わるのです。

常温でも良し。冷やしたり温めたりと、その日の気分や日本の四季、旬の食材との相性などに合わせて飲み方や、味わいを変えることが出来ます。

 酒自体を温めることを燗(かん)を付ける、お燗(おかん)するなどといいます。燗した日本酒は燗酒(かんざけ)と呼ばれており、温度帯によって名称が変わります。

  • 日向燗(ひなたかん)     30度   ほんのり香りが引き立つ
  • 人肌燗(ひとはだかん)       35度   味にふくらみが出て、ご飯のような良い香りが広がる
  • ぬる燗               40度   香りがより広がる
  • 上燗(じょうかん)              45度   香りが引き締まる
  • 熱燗(あつかん)                  50度   キレがよくなり、香りがシャープになる
  • 飛びきり燗(とびきりかん)55度    シャープな香りで、辛口になる 

 

お燗をすることによってお酒の旨みが増すことを「燗上がり」と言います。

日本酒は温度を上げることで旨みを強く感じるアミノ酸(=旨み成分)含有量が他の酒類を圧倒しています。

つまり、日本酒は冷たくして飲むより、温めた方が日本酒の持つ「旨み」を最大限引き出すことが出来るのです。

ちなみに、お燗は日本酒や紹興酒などを飲む際に行われるのがほとんどで、世界的に見ても珍しい飲み方です。一方、蒸留酒やカクテルなどのお湯割りによってお酒の温度を上げるという飲み方は世界的に珍しいことではありません。

 

「冷や」とは

 

冷や(ひや)とは日本酒の温度を示す言葉なのですが、皆さんはどれくらいの温度かわかりますか?

「冷」という漢字を使っているため、冷蔵庫で冷えていそうな印象を受けてしまうかと思いますが、実は「冷や」は常温のことを示します。

なぜかと言いますと、冷蔵庫が普及する時代まで日本酒は常温かお燗でしか飲まれていなかったため、常温の状態を「冷や」と呼んでいたためです。

ちなみに、冷蔵庫などで冷やしたお酒を冷酒(れいしゅ)と呼ぶのですが・・・近年、お酒を冷蔵することが普及したことによって、間違った常識が広まってしまいました。

 

それは、冷やしたお酒を「冷や」と呼ぶようになったことです。

 

飲み屋さんに行くと、私の体感で3~4割はメニューに「冷酒」が「冷や」と表記されており、試しに「冷や」を頼んでみると、キンキンに冷えた日本酒が提供されます・・・

日本酒を冷蔵庫に入れることが、より良い管理方法だと認知され普及したことは、造り手としてはとても喜ばしいことですが、間違った名称が広まってしまうのは悲しいことです。

冷や、冷酒、燗酒としっかりとした名称で統一して欲しいですね!

 

 

お燗は料理との相性を高める

 

前回の記事で、日本酒は様々な料理と合わせることができるとご理解頂けたと思います。

sake-brewer.hatenablog.com

さらに、日本酒はお燗をすることによって料理との相性を高めるができるのです。

お燗をすることにより、日本酒の持つ複雑な旨み成分が味の幅を広げ、料理との相性を広げるのです。

 

また、肉料理や脂っこい料理と飲む際は、味わいだけでなく、「お酒の温度」が有効に働きます。

油や脂肪成分は温度が高くなると液化し、サラサラになります。しかし、温度が低くなると粘り気が出て、固形化してしまいます。冷えたお肉料理は脂が白く固まりますよね。

つまり、肉料理や脂肪分の多い料理に冷えた酒を合わせると、固形化した脂肪成分が口の中に残り、後味のキレが悪くなります。

しかし、燗酒を合わせることによって、口の中の脂肪成分が固形化することなく、サラっと洗い流されることによって、後味のキレが格段に良くなります。

 

 

お燗は体にも優しい

 

燗酒は冷たいお酒と違って、体温を下げることが無いので身体への負担も少ないです。

そして、燗酒は体温に近いことからアルコールの吸収が早いため、飲みすぎを防止することが出来ます。(アルコールは体温くらいで吸収されるため、冷たい温度のお酒は吸収されるまでにタイムラグがあります。これは飲みすぎてしまう原因の一つでもあります。)

 

 

自宅でも簡単に出来る燗酒

 

本投稿では燗酒の様々な魅力や素晴らしさを解説してきましたので、今晩は燗酒で一杯…などと考えている方もいらっしゃると思います。そんなアナタのために、自宅でも超簡単にお燗ができる方法を紹介していきたいと思います。

 

レンジで温める

 一番手っ取り早い方法です。日本酒を容器にいれレンジで温めるだけです。

お好みの温度帯やレンジのワット数、温めるお酒の量で加熱時間が違ってきますので、自分好みの燗酒ができるように調整してくださいね!

もし、燗酒でアルコールがきつく感じる方は、温める温度を下げるか、少し加水してから温めてみてください。燗酒にすると味わいにボディー感が出てくるので、アルコールが1~2%低くなっても薄く感じることはありません。むしろアルコール度数が下がることによって、口当たりが丸く感じますし、体への負担も軽くなります。

 

ケトルで湯煎

日本酒を徳利に入れ、水の入ったケトルに入れます。そして、ケトルの蓋を開けた状態でお湯を沸かします。

すると簡単に徳利を湯煎することが出来るのでお勧めです。保温や温め直しも簡単に出来ます。

また、湯煎と電子レンジでは、温度の上がり方が違うためか、同じお酒を同じ温度まで温めた場合でも、不思議なことに味わいが変わってきます。

私は味わいが柔らかく感じるため、湯煎の方が好きです。

 

※ケトル本来の使い方ではありません。また、ケトルの蓋を開けたままお湯を沸かすので、火傷には注意してください。

 

蒸し燗(上級編)

蒸し燗をご存知でしょうか?

知っていたあなたはなかなかの上級者ですね・・・

蒸し燗とは、蒸籠で日本酒の入った徳利を蒸してお燗をする方法です。

手間はかかりますが、蒸し燗をしたお酒の柔らかさは本当に素晴らしいです…

電子レンジや湯煎よりも、ゆっくりと温度が上昇するため、柔らかな口当たりになります。

何事もゆっくり丁寧に行った方がうまくいったり、良いものができるかと思いますが、それと一緒ですね。

 

 

まとめ

 

燗酒の素晴らしさを知っていただけたでしょうか!

燗酒は若い世代には、おやじ臭いと敬遠されがちですが、イメージだけで飲まず嫌いを決め込むのは本当にもったいないことです。

燗酒を知ることで、日本酒の奥深さや、無限に広がる料理との食べ合わせの世界を知ることが出来ると思います。

この世界にハマってしまい、1年中燗酒しか飲まないという知り合いもいるほどです。笑

4月になり、気温も暖かくなってきましたが、夜になると肌寒い日も多いかと思います。

そんな日はぜひ燗酒を飲んで体を温めてください!

よろしくお願い致します!

 

 

B.C