Sake Brew Master's blog

28歳 蔵元杜氏の日本酒ブログ

なんちゃって冷卸(ひやおろし)をぶった切る

 

どうも。B.Cです。

近年、日本酒業界にはなんちゃって冷卸が蔓延しています。

今回はその冷卸問題に切り込んでいこうと思います。

また、秋上がり冷卸を勘違いしている方も多いかと思うので、この機会に違いを理解していただけたらなと思います。

 

目次

 

 

 

秋上がり(あきあがり)

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秋上がり(あきあがり)とは冬場に醸造されたお酒が一夏を越す間に熟成して、秋に香味が整い円熟味が増して酒質が向上することを指します。秋晴れともいいます。

逆に、貯蔵条件の不良などによって酒質が下がることを秋落ちといいます。

健全な発酵をしたお酒は新酒の際荒さが目立ちますが、秋上がりしやすい傾向があります。

 

 

冷卸(ひやおろし)

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冷卸(ひやおろし)とは冬場に醸造されたお酒を火入れ(加熱殺菌)した上で貯蔵し、蔵の中で一夏を越して、蔵の中と外気温が同じくらいになった頃に二度目の火入れをすることなく冷や(常温)で卸す(出荷する)酒のことです。

二度目の火入れがないのでお酒は生詰めとなります。

 

 

近年の冷卸事情

 

前述の通り、冷卸は一夏を越えた熟成を楽しむ秋のお酒(生詰)だということが理解していただけたかと思います。

しかし、近年の冷卸はお盆明け、8月下旬には店頭に並んでいます。

お盆明けに店頭に並ぶということは、蔵出しは8月上旬ということが示唆されます。

 

あれ?夏越していないよね???

 

酒蔵、酒販店共にマーケティングの観点から、季節物の先取りということでどこよりも早く売り出したいのでしょうけど、一夏越して外気温と蔵の貯蔵温度が同じくらいになった頃に出荷するということが起源の冷卸を気温が40℃近くある8月中に販売するのはいくらなんでも早過ぎです。

当然お酒の熟成も進んでいないことが示唆されます。

 

もう、なんちゃって冷卸です。

 

私はこのまま冷卸の出荷時期がどんどん早くなるのではないかと危惧しています。

似たような季節物ですが、夏酒(コチラは近年現れた新しいジャンル)も梅雨の時期にはお店に並んでいますし・・・

目先の利益に目がくらんで、文化を破壊していることに気が付いていないのです。

 

 

解禁日を設ける

 

2007年に日本酒造青年協議会から冷卸解禁日について提言がありました。

毎年9月9日(重陽節句)を冷卸の解禁日(発売日)に統一して日本酒業界全体で推進していこうというものです。

  

<「ひやおろし」発売日(解禁日)に関する提言>

 

 日本酒は日本の原点である米と水を原料とし、長い歴史と美しい風土にはぐくまれ、その品質や製造方法などにより多種多様な味わいを特長としている。そして、古来より季節の移ろいとともにさまざまな楽しみ方のできる、数少ない嗜好品のひとつである。

 

 しかしながら近年、食生活や食材の供給の変化とともに日常生活の中で季節感を先取りし過ぎているような状況さえ見受けられる。

 

 そこで日本酒造青年協議会は、失われつつある日本文化と日本人らしい季節感を取り戻すとともに、業界全体の需要拡大の誘導効果を導くためのひとつの取り組みとして、“ひやおろし”の全国一斉発売を提言する。

 

 いうまでもなく“ひやおろし”は、近年定着しつつある季節感をもった商品である。私たちはこの財産を大切に守っていきたい。

 

 日本酒造青年協議会は、以下の提言を積極的に推進し、日本酒業界全体の運動となるべく行動することを決議する。

 

 提言内容=毎年9月9日(重陽節句)を“ひやおろし”の発売日(解禁日)とし、日本酒業界全体で統一して推進することを提言する。

 

 (なお“ひやおろし”の定義には諸説あり、“ひやおろし”の新たな統一した定義について今後さらに検討を深める必要性があるが、当面は「厳寒期に醸造した清酒を一夏越して調熟させ、秋口に入ってほどよい熟成状態で出荷するもの」とする)

                       醸界タイムスWEB版より引用

                       http://www.jyokai.com/?p=1541

 

上記のような素晴らしい提言がありました。

しかし「提言」ですので強制力は無く、我先にと販売している蔵が多くなっているのが現状です。

もう冷卸問題を解決するには、強制力を持った法度を日本酒造中央会が出すしかないのかもしれませんね。

この問題は酒蔵のモラルの問題でしかないので、本当に情けない話です。

 

 

私見

 

私の意見としては9月9日でもまだまだ真夏日が続いていますし、熟成の観点からも冷卸の出荷は早過ぎると考えています。

やはり、酒蔵が日本酒の季節感や旬の美味しさを提供することが「冷卸」という形で文化となって現代に残っていること、次の世代にも伝えなければならないということを考えなければいけません。

10月頃の外気温が蔵の貯蔵温度と同じくらいになり、酒が十分に熟成しきった頃に出荷するべきです。

それが本当の「冷卸」なのですから。

 

 

まとめ

 

これから美味しい食べ物で溢れかえる食欲の秋がやってきます。

ぜひ旬の食べ物と熟成した味わいの冷卸を楽しんで季節感を感じていただけたならと思います。

また、飲み手として近年の冷卸問題についても考えていただけると幸いです。

 

それでは楽しい日本酒ライフを!

 

 

B.C