Sake Brew Master's blog

28歳 蔵元杜氏の日本酒ブログ

貴醸酒

 

目次

 

 

貴醸酒とは

貴醸酒とは昭和48年に国税庁醸造試験所 (現:独立行政法人 酒類総合研究所)で開発されたお酒です。日本酒は米、米麹、水から造られていることはご存知かと思いますが、貴醸酒はその水の全部または一部を日本酒で代用して造られます。言わば日本酒で造った日本酒です。

貴醸酒という名称は「貴醸酒協会」の商標名のため、同協会に所属していないと使用できません。協会に属していないメーカーは「再醸仕込み」「醸醸」「三累醸造」などのように別の名称で商品化・販売を行っています。

 

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貴醸酒のパイオニア 華鳩

 

特徴

貴醸酒は酒から造られた酒ということもあって、味わいは極めて濃厚で、濃醇な甘味と爽やかな酸味を特徴としています。独特の香りや照り、トロっとした舌触りは普通の日本酒では味わえない魅力です。

また、貴醸酒は糖分やアミノ酸が多いことから熟成に適した酒質を有しています。熟成した貴醸酒は綺麗な琥珀色を呈し、レーズンのようなドライフルーツの香りやカラメル様の熟成香と貯蔵により酒中のたんぱく質やペプチドが分解されることでアミノ酸が増加し、味の幅や深みが増していきます。

 

 

なぜ甘口になるのか

一般的に貴醸酒の製造は、三段仕込みの留仕込み時に汲み水の代わりに清酒を添加することで行われます。過去の研究結果から、留仕込みの際に約9~10%のアルコール濃度になるように清酒を添加することで、香味の調和がとれた貴醸酒を製造することが出来ます。

留時に添加する清酒が少量で、初発のアルコール度数が低い場合、通常の清酒とあまり変わらない酒質になり、初発のアルコール度数が12%を超えると、さらに甘口で味が濃くなり調和に欠ける酒質になってしまうことがわかっています。

また、仕込みの際にアルコールが存在すると酵母の発酵力に大きく影響を与えます。清酒酵母はアルコール耐性を有し、発酵によってアルコールを生産しますが、発酵が進みアルコール濃度が濃くなればなるほど酵母自身にとっても過酷な環境に置かれることになり、活動が緩慢になっていきます。貴醸酒製造の場合、酵母は約10%のアルコール濃度という過酷な環境から発酵をスタートするので、活動が緩慢になり発酵のスピードは緩やかになります。

また、醪中には20%を超えるアルコールを生産することが出来る量の糖分が存在しますが、貴醸酒の場合、初発時から10%のアルコールが存在しているため、アルコール度数18%で搾るとすると、発酵によるアルコールの生産は8%程度しか行われません。

そのため、本来アルコールになるはずの糖分が大量に残糖分として酒中に残ります。(厳密に言うと発酵<糖化となり、糖化がが発酵を先行する)

つまり、初発時の約10%のアルコールの存在によって、酵母の発酵が緩やかになり、残糖分が多くなることから貴醸酒は濃醇な甘口になるのです。

 

 

濃醇な甘口でもすっきりしている理由

貴醸酒は通常の清酒と比べて相当甘いのにもかかわらず、口当たりが良く軽快ですっきりしています。その理由として、酸度が約3.0(通常2以下がほとんど)と高く、その酸味が濃醇な甘味と調和していることが挙げられえます。

さらに踏み込むと、清酒には約40種類もの有機酸が含まれており、その中でも乳酸、コハク酸、リンゴ酸の3種類で8割を占めています。

通常、乳酸とコハク酸が同程度含まれ、リンゴ酸はコハク酸の約半量です。乳酸はやや乳製品を感じる柔らかな酸味、コハク酸はゴク味を感じるくどい酸味、リンゴ酸は爽やかな酸味を感じます。

貴醸酒は爽やかな酸味のリンゴ酸の含有量が多く、通常の清酒の約1.5倍含まれています。さらに、くどい酸味であるコハク酸の含有量も少なくなる傾向があります。

つまり、貴醸酒特有の甘くてもすっきりした味わいは、濃醇な甘みと爽やかなリンゴ酸が調和し、かつくどいコハク酸が少ないことが理由として考えられています。

 

 

おすすめの飲み方

貴醸酒の美味しい飲み方としては、新酒はフレッシュさを活かすため冷酒やオンザロックで食前酒や食後酒として、熟成酒は冷酒や常温、お燗にして食後酒やナイトキャップ(寝酒)として楽しむのがおすすめです。

また、貴醸酒は非常に濃厚なお酒ですので、ソーダやトニックなどで割ることでさらにすっきりと飲むことも出来ます。

そして・・・バニラアイスクリームに貴醸酒をたっぷり掛けて、カフェ・アッフォガートの様にして食べる大人のデザートサケ・アッフォガート(私が勝手に命名)は正に至高の味です。大事なことなので2回言いますが、至高の味です。個人的には、濃厚なバニラには琥珀色の熟成物、ソルベやジェラートなどのさっぱり系にはフレッシュな新酒タイプがおすすめです。

 

 

まとめ

今回は貴醸酒についてまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?

最近は貴醸酒を製造している蔵も増え、徐々に認知度も上がってきた印象を受けます。

デザートワインアイスワインを思わせる濃醇な甘口で食前酒や食後酒、アイスに掛けたりなど日本酒初心者の方でも非常に飲みやすく、一つの日本酒の入り口として非常に取っ付き易いのではないかと思います。

また、日本酒の多様化や高付加価値化のためにも、もっと広まって欲しいですね。

貴醸酒も通常の日本酒と同様に蔵ごとで、フレッシュタイプであったり、熟成感を売りにしていたりと明確に特徴が分かれているので、いろいろと飲み比べてみて好みの一本を見つけてください!

それでは楽しい日本酒ライフを!

 

 

B.C