「獺祭」醸造元 旭酒造さんの酒蔵見学に行ってきました。
簡単ではございますが、見学の様子をまとめましたのでご覧ください。
本社蔵
高速道路を降りて山の中を走ること20分・・・大自然の中に不自然に聳え立つ12階建てのビルが姿を現しました。
このビルこそが旭酒造さんの本社蔵です。今回はこの本社蔵における酒造りを見学させて頂きました。
ちなみに、すぐ近くには2号蔵。こちらでもお酒を造っています。
見学者用の白衣と帽子を被り見学スタートです。
蔵の入り口にはエアシャワーを完備。ここで服についた小さなゴミや髪の毛を蔵の中に持ち込まないように風で払い落とします。
洗米の様子
まずは原料処理からということで、洗米の様子を見学するところからスタートしました。
1ヶ月ほど前から全自動の洗米機が導入されたそうです。(見切れていますが写真左)
しかし、機械洗米でのデータの蓄積量が不足していることから、まだ全量機械洗米にはなっていないそうです。近い将来、全量機械による洗米によって、より安定した洗米、浸漬が行われ、さらに酒質が安定することでしょう。
全自動洗米機は私の蔵にも欲しいですね~!(笑)
甑(こしき)と放冷機
こちらが甑(こしき)と放冷機です。
甑とはお米を蒸す器具で、3人の蔵人が前日に洗米したお米を甑に張り込んでいます。
この甑で蒸したお米を放冷機で冷まし、麹造りやお酒の仕込みに使用します。
麹室(こうじむろ)
こちらが麹を造る部屋です。麹室(こうじむろ)といいます。
圧巻の広さの麹室で、壁や天井がステンレス張りです。本来の麹室の壁や天井は木で出来ていますが、近年は掃除のしやすさからステンレスを採用する酒蔵が増えてきています。
麹室は麹菌が生育しやすいよう高温多湿の部屋で、室温は35℃ほどあり、湿度はエアコンで調整されます。
天井にぶら下がっている布は、空調の風が直接麹に当たらないように設置されています。隅々まで掃除が行きわたっており、ビカビカでした・・・。圧巻です。
麹室の説明を受けていると、麹になる予定の蒸し米が引き込まれてきました。
蔵人が床台(とこだい)と呼ばれる台にお米を薄く広げています。この瞬間から麹造りがスタートします。ここから約48時間ほどかけて麹が造られていきます。
仕込み蔵
こちらが仕込みが行われるフロアです。
3000L容のタンクが100本ほど設置されています。このタンク1つ1つで美味しい獺祭が醸されています。部屋は冷房が完備されており、1年中酒造りに適した温度になっています。日本酒は秋から冬にかけての寒い季節に造られるものでしたが、近年は冷房技術の発達によって、1年中日本酒を造ることができるようになってきました。
部屋中に青リンゴを思わせるようないい香りが漂っていました。
発酵の様子
原料である麹、蒸し米、水が混ざっており、酵母菌が発酵しています。これを醪(もろみ)といいます。醪を搾ると日本酒になります。
表面のプクプクは酵母菌が元気に発酵して生産された炭酸ガス(二酸化炭素)です。
※アルコール発酵の化学式:C6H12O6→2C2H5OH+2CO2
酵母菌によってグルコース(C6H12O6)が代謝され、エタノール(C2H5OH)と二酸化炭素(CO2)がつくられます。
タンクの縁から下は炭酸ガス(二酸化炭素)が充満しているため、醪からいい香りがするからと顔を突っ込んだりしてしまうと、一瞬で酸欠状態に陥り、気を失ってしまいます。本当に危険ですので、酒蔵見学に行く際は気を付けてください。
搾り機
こちらが醪(もろみ)をお酒と酒粕に分ける搾り機で、“ヤブタ”といいます。
アコーディオンのような形をしていますが、横からの圧力をかけることによってお酒を搾ります。
また、こちらは遠心分離による搾り機です。
遠心分離とは液体に対して強力な遠心力をかけることによって成分や比重が異なる物質を分離する方法です。
理論上、加圧を行わずに醪からお酒を分離することができるので、雑味の少ないお酒が搾ることが出来るようです。
瓶詰
こちらが瓶詰の様子です。
瓶詰は異物混入防止のため、クリーンルームで行われます。
瓶詰後はパストライザーと呼ばれる機械で加熱殺菌を行った後、ラベルが貼られます。
これで「獺祭」が完成します。ここからお客様の手元へと旅立っていきます。
獺祭ストア
見学後は本社蔵向かいの獺祭ストアにてお酒の試飲を行いました。
いつも安定して美味しいお酒ですが、見学させていただき、様々なこだわりを知った後で飲む獺祭はいつもより美味しく感じました。
獺祭ストアでは販売している全商品の試飲が可能で、獺祭の酒粕を使用したジェラートなども食べることが出来ます。ちなみにジェラートはバニラ味がお勧めです!
まとめ
私はこれまでに様々な酒蔵の見学をさせて頂きましたが、旭酒造さんの設備はおそらく日本一でしょう。設備もさることながら、衛生環境も本当に素晴らしいです。
機械化出来ることは機械に任せ、本当に大切な部分に人の力をつぎ込む。
最先端の設備や蓄積されたデータを用いることで杜氏を雇うことなく、誰が造っても高品質で安定した「獺祭」の味を提供するといった、次世代の酒造りモデルとも言える新しいスタイルの酒造りについて学ばせて頂きました。作業効率を上げるための工夫や、酒質を上げるための工夫が随所に見られ、本当に勉強になりました。
"ド"がつくマイナーブログではございますが・・・旭酒造の皆様、この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
最後に・・・旭酒造さんはAIを用いた酒造りを試験的に始められたそうです。
新聞やニュースでも取り上げられていましたね。
「杜氏のいない酒造り」から「AIによる酒造り」になる日もそう遠くはないのかもしれませんね・・・
以上、簡単ではございましたが、「獺祭」醸造元、旭酒造さんの酒蔵見学のレポートでした。